ディベートで人間に勝ったAIは言葉を理解しているのか?
こんにちは、テレコム第2チーム サクマです。
大げさなタイトルをつけてしまいましたが内容はただの感想記事です。
期待をされた方は本当に申し訳ありませんが専門的なお話は一切なくて、ポエムのようなものです。
それでもよいという方、ありがとうございます。続きをどうぞ。
先日社内のSNSで紹介された以下の記事を読んでとてもびっくりしました。
IBMのAI「Project Debater」、ディベートチャンピオンを打ち負かす - ITmedia NEWS
人間の意見に反論できる、ということは人間の言っていることが理解できているということではないか?と考えたからです。
AIで言語を利用するシーンというのは自動変換、自動翻訳、チャットボット などなど色々とありますが、あくまでAIはルールに従って言葉を切り貼りしているだけであって内容が理解できているわけではない、というのが私の理解です。
「おなかがすいた」という言葉を聞いてAIが近くにあるレストランを検索して答えを返してくれるのは「おなかがすいたと言ってるからきっと何か食べたいんだな」と理解してくれているわけではなく、「おなかがすいた」というキーワードでそうするように設定されているからだ、ということです。
実際に私たちが理解するように文章の内容を理解したり、文と文のつながりを捉えたりするには、それはもうたくさんのハードルを越えなくてはならないと理解をしていました。
ではディベートAIはどうなんでしょう?私達の話す言葉を理解しているんでしょうか?
結論としては、どうやら理解できているわけではなさそうです。
ディベートに勝つための立論のテクニックや文章のフォーマットがあるので、言葉の意味はわかっていなくてもディベートに勝つための文章を作成できるようになった、ということなのだと思います。
http://www.research.ibm.com/artificial-intelligence/project-debater/research.html
ディベートとは、一つのテーマについて賛成、反対に分かれて決められた時間で立論をして、その説得力を競う競技です。
※詳しいルール(http://nade.jp/material/beginners/howto)
ディベートをするために、AIがやっていることは例えば以下のようなことです。(本当はもっとたくさんのことを処理しています)
- テーマについて賛成/反対している文章を探す。
- 根拠となる文章を探す。数値や専門家の意見や実話などを出すと説得力がある。
- テーマについて反論の準備をする。
- 文章と文章を組み合わせて時間内に収まる長さの文章を作る。
それぞれのところでやっていることはこんな感じみたいです。
- テーマについて賛成/反対している文章を探す。
→いわゆる検索です。 - 根拠となる文章を探す。数値や専門家の意見や実話などを出すと説得力がある。
→数値は数字が入っている。専門家なら職業名、実話なら固有名詞が入っている。 - テーマについて反論する。
→テーマの反対をやればよい。反論用のフォーマットも意識して文章を作る。 - 文章と文章を組み合わせて新しい説得力のある文章を作る。
→なんとなく、と言っては失礼ですが、意味がわからなくてもこういう組み合わせを作ると高確率でそれらしい文章が作れる、という方法があるらしい。
とりあえず、AIが文章の意味を理解できるようになったわけではないようです。私の知らない間に未来が来ていたわけではなかった。ホッ。
タイトルについては結論が出ましたが、エントリはもう少しだけ続きます。
調べてみたらディベートAIは日本でも作られていました。
これは2015年の記事です。(要会員登録)
[脳に挑む人工知能14]「ディベートAI」の背後にある知性と感情 | 日経 xTECH(クロステック)
価値の良し悪し(「健康」+「長寿」→良い 「健康」+「肥満」→悪い)でポジティブな文章かネガティブな文章かを見分けることができるのがポイントのようです。
昔からディベートAIの開発は行われていたんですね。知りませんでした。
結局、言葉の意味はわかっていなかったよ、という話を初めの記事を紹介してくれた関口に話したところ、
「言葉の意味は完全に理解しないままでもディベートの世界チャンピオンに勝っちゃうってすごくないすか?」
と言われました。それは確かに。。
今回のニュースで囲碁や将棋の世界でAIが人間に勝つことができたように、ディベートでもAIは人間に勝てるということが示されました。
その気になればセールストークや謝罪なども人間よりずっと上手にこなすのかもしれません。ぜひ代わってやってほしい。
冗談はさておき、ディベートAIの技術はある知りたい問題についてどんな良いところと悪いところがあるかを教えてくれるすばらしい技術だと思います。
たとえ言葉の意味が理解できていなくても人間から見て、学習し、判断していると人間が感じられればそれはAIと言える。
今まで中身を理解していないんじゃAI(人工知能)とはいうもののいまいちだなぁ、と思っていましたが、今回のニュースを見て、私達よりよほど上手に色々なことをこなしてくれる優秀なパートナーなのだな、と思うようになりました。
物理学者はAIをこう見る~あなたは「正しく」怖がれていますか?(松浦 壮) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)
会社のSNSでこの問題について議論してくれた関口さんと吉田さんに感謝します。無事エントリの形になってよかった。
拙い知識で作成したものですのでご指摘があれば訂正もしていきたいと考えています。
以上、お付き合いありがとうございました。
書いた人:テレコム第2チーム サクマ